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田沼時代の「終焉」を招いた田沼意知の最期

蔦重をめぐる人物とキーワード㉒


6月8日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22回「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」では、筆を折った恋川春町(こいかわはるまち/岡山天音)が新たな境地を見つけ、文壇復帰を果たす様子が描かれた。後押しした蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)の耕書堂はさらなる発展を遂げる一方、蔦重は思わぬ人物と再会し、幕府の壮大な計画への協力を求められることになる。


■恋川春町が皮肉屋として覚醒する

田沼意知の殺害事件を風刺した、山東京伝の黄表紙『時代世話二挺鼓』(国立国会図書館蔵)。当時のヨーロッパ人たちは「父親(意次)は高齢で間もなく死ぬだろうが、息子(意知)はまだ若いので、彼らが考えていた改革を十分実行するだけの時間がある」と意知に期待を寄せていたという。

 恋川春町が筆を折ると宣言してから10日が過ぎた。蔦重は春町のもとを訪れ、朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ/尾美としのり)の新作の画付けや新たな戯作の執筆を依頼するが、春町は「俺は戯けることに向いていない」と頑なに拒んだ。

 

 同じ頃、花魁(おいらん)・誰袖(たがそで/福原遥)は蔦重を大文字屋に呼び出し、自らも青本を書いて戯作者になろうとしていることを明かした上で、抜け荷の証拠を掴む方法を相談する。そんな誰袖の前に、松前家江戸家老の松前廣年(まつまえひろとし/ひょうろく)が現れた。誰袖は彼の琥珀(こはく)の腕飾りが抜け荷の証拠ではないかと疑う。

 

 一方、春町の代わりに喜三二の新作『長生見度記』の画付けを担当することになった歌麿(うたまろ/染谷将太)は、喜三二を連れて春町を訪問。そこで春町は北尾政演(きたおまさのぶ/古川雄大)を盗人呼ばわりしたのは負け惜しみだったと告白し、「『御存商売物』は『辞闘戦』の百倍よく出来ている」と素直に認める。二人は春町にこのまま筆を折らないよう必死に説得した。

 

 心を動かされた春町は耕書堂を訪れ、蔦重に詫びを入れる。蔦重は大田南畝(おおたなんぽ/桐谷健太)の助言を受け、「皮肉屋の春町」という新たな作風を提案すると、春町は自作の「作り文字」を披露し、吉原を舞台にした皮肉の利いた作品の構想を練り始めた。

 

 誰袖の情報を受けた土山宗次郎(つちやまそうじろう/栁俊太郎)は田沼意知(たぬまおきとも/宮沢氷魚)に報告。意知が誰袖を訪ねると、誰袖は琥珀だけでは不十分だと言う意知に対し、廣年に蝦夷(えぞ)を通さない抜け荷をやらせるという大胆な提案をする。誰袖の覚悟を知った意知は、抜け荷の証拠を掴めたら身請けすると約束した。

 

 その年の暮れ、蔦重は世話になった人々をねぎらう宴を開く。春町が「作り文字」で書いた青本も披露され、春町は政演に謝罪して酒を酌み交わす。蔦重と歌麿は、二人の和解を心から喜んだ。

 

 宴会の席を後にした蔦重は「花雲助」と出会う。その正体が意知であることを知って驚く蔦重に、意知は蝦夷地を天領とし、幕府を中央集権化する壮大な計画を打ち明け、協力を求めたのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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